2016年7月30日土曜日

犬が舐める理由

犬が舐める理由
from : ドッグウォーカー博士のスローライフ

今朝はピーちゃん(パピチワ♀10歳)が、7時ごろに散歩に行こうとスタンバっていた。

すっかり目が覚める8時ごろだともう暑くなっているので、早めに行こうと思ったのかもしれない。

ルルさん(ヨーキー♀11歳)は、「今日は暑いから散歩なんて行きません」、だそうだ。

夕方散歩がますます暑くなってきたので、はっちゃん(秋田MIX♂4歳)は、近所の草地で干しミミズを食べ、涼しいお寺で休憩して、浅い用水路に足を浸して帰ってくる。

それでも40分ぐらいはかかる。

途中であまり会わない柴ミックスに会ったが、とてもおとなしい子だったのでスルーした。

暑いと体力を消耗するので、高齢のキキさん(サビネコ♀20歳)が心配だが、食欲はあるし、涼しい時間に庭散歩をしたりして元気にしている。

ルルさんは、わたしが朝なかなか起きないと、顔をベロベロ舐めて起こそうとする。

夕ごはん前も、「早くごはんにして~」と舐める。

こういうのはコミュニケーションとしての舐めだ。

人間の手にはいろいろな使い方があるように、犬の口にもいろいろな使い方がある。

知らないものの正体を確かめる、モノを運ぶ、グルーミングする、子供をあやす、コミュニケーションをとるなどなどである。

なかでもコミュニケーション手段としての使い方のバリエーションはすばらしい。

口の形を変える、くわえる、舐める、声を出すなどの組み合わせと、そのコントロールで、実に様々なことを伝え合っているのだ。

犬の口関連というと、飼い主はどうしても「無駄吠え」とか「噛み付き」といった「問題行動」ばかりに目が向いてしまうが、それ以外の使い方にも注目したい。

よく、なぜ人の顔を舐めるのかと聞かれることがある。

巷では、「舐める相手への絶対服従を表す行為である」などと解説しているものもあるが、そうかなぁ?と思ってしまうのは、わたしだけでないはずだ。

逆に、「なぜ人は犬を撫でるのか」という質問だったらどうだろう?

いろんな答えがありそうではないか。

それこそ「主従関係を知らしめる」ために撫でる人もいそうだし、愛情表現として撫でている人もいる。

病気チェックの場合もあるし、グルーミングのこともある。

こういう社会的行為の場合は、どのような状態で、どのようなやり方でそれがなされたかという脈絡が大事だ。

撫で方にもいろいろあるように、舐め方にもいろいろある。

はっちゃんは、わたしが長めの外出から帰ったときには、喜んでベロンベロンと顔を舐めてくる。

人もあまりにうれしいと声を上げて飛び回るなどの子供っぽい行動をすることがあるが、犬もパピー時代にやっていた顔舐め行動がよみがえってしまうのかもしれない。

それにたいし、相手の気持ちをなだめる舐めは、口元をぺロッとする程度で、成犬同士でも、人に対しても行われる。

叱られた犬が飼い主を舐めるのはこの類である。

次のような行為もこれと同じカテゴリーに属する。

ブラッシングしたりハーネスをつけようとしているときに、うっかり毛を引っ張ってしまって、ちょっと痛かったときなんかに、ぺロッと手を舐めるというものだ。

「痛くしないで、やさしくして」と言っているのだ。

これは従来、服従を表すと言われていたものだが、緊張や対立を緩和して友好的な関係を築くための「カーミングシグナル」である。

この行動を、「飼い主に媚びる」と表現する人もいる。

「媚びる」という言葉は、気に入るように振舞うという意味であり、「権力者に媚びる」などというように使われる。

そこからすれば、支配-従属パラダイムで人-犬関係をとらえようとする人の目には、まさにそのように映ってしまうのだろう。

仲のいい犬同士や犬と猫などの間で、お互いに舐めあうというのもある。

これはソーシャルグルーミングとしての行為だ。

人間も含む社会的動物は、お互いを毛づくろいしあうことにより、絆を形成したり関係を構築したりするのだ。

猫同士は寝る前に必ず行うし、ルルさんは気に入った保護猫とやる。

そしてわたしに対しては、多かれ少なかれみんながやってくれるのだ。

ベッドで寝転んでいるときに、体の上に乗ってきて、顔の汚れている部分、時にTゾーンとか小鼻のまわりなどを一定のリズムで舐める。

汚れを落としてきれいにしてやろうという意思のこもった舐め方である。

こんなときには、犬猫はリラックスしてちょっと眠くなっており、ゆったりと落ち着いた気分でいる。

わたしも同時にそっと撫でてお返ししてあげる。

人の気持ちが複雑なことは論を待たないが、動物の気持ちもそう単純ではないことが、近年の研究によって明らかになりつつある。

自分の頭の中にしっかり構築された主従関係・上下関係の枠組みで(あるいは色眼鏡をとおして)犬を眺めると、かれらが持つ豊かな感情世界が遠くにかすんでしまう。

目の前にいる、世界にたった1匹の、まさにその犬自体を、自分の目でよく観察してみよう。

もっとよく知りたい、わかりたいという気持ちが、目を開かせてくれるのだと思う。

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